「これから卒業研究を始めます」
自信満々に言ったのは、学生時代の同じ研究室の子だった。
ぼくはね、彼が純真で、すばらしい人だと今は思っているんだ。
真っ直ぐで、笑っていて、話しかけてくる。
人と仲よくなりたかったんだよ。
学生時代のぼくは、そのことをわかってやれませんでした。
正直に言います。
人としてみていませんでしてた。
でも、今は彼がとても純真で無垢な、一人の立派な人間のように思えるのです。
生きるか、死ぬか、などと毎日絶叫しているぼくのようなダメな人間からしたら、
彼はこの世に生まれてきた人の中でも、素晴らしい。
そう思えるのです。
障害があろうと、片足がなかろうと、
おんなじ人なんですよ。
ぼくだって、不自然です。
不自然なところに傷があるし、
不自然な体格をしているし、
挙動不審だし。
でも、生きている。
生きようとしている。
無垢は発表を思い出します。
あまり思い出せません。
でも、とにかく、彼は自分の出来うる限りのことをしていました。
それが、今のぼくには素晴らしく輝いているのです。
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