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旅人の病記

自分に負けないように。

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どんよりとした街

どんよりとした街から戻ってきました。

どんよりとしているから、ずっと体調が悪かったです。

ある日は頭痛が酷く、ある日は胃痛が凄まじく、

ある日は酷く憂鬱で、笑うことも泣くこともできませんでした。

本当にどんよりしていました。



そんな街の中を歩いたり、景色を見たりすると、

酷く憂鬱になります。なりました。

どんよりと陰鬱な深淵に引きずりこまれていきました。



雨が降っていたから、どんよりしていたのではありません。

ぼくにとって、故郷はどんよりした街なのです。

雨が降れば、余計にどんよりするのは、当然です。



この一週間の間に、『戦争と平和』という小説を読む傍ら、

大江健三郎と川端康成の小説を少しだけ読んでみました。

大江健三郎の『新しい人よ目ざめよ』は最初の

『無垢の歌、経験の歌』だけを読みました。

それからペラペラとページを繰ったら、

最後から2ページ目と3ページ目が落丁していて、白紙でした。



あのページに写っていたはずの活字はどこへ飛んでいったのだろう。

どんよりした街から、逃げ出したのか、

いや、大江健三郎のしっかりとした文章が逃げ出すはずがないのです。

講談社のミスです。

今度、文庫本を買おうと思います。



川端康成の全集が家に眠っていたので、

その中の『片腕』という短編を読みました。

確かテレビで、筒井康隆がオススメしていました。

雨が降っていて、濃い霧が出ている描写が印象的な小説です。

幻想的で、情欲的にも感じられる、美しい文章で描かれています。

でも、ぼくの故郷の雨は、

故郷をより沈鬱で、どんよりとした街にするばかりです。

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